制作が決定してから、ジャマイカ人アーティストの行動はめちゃくちゃ早かったです。
なんせ1~2日でラフミックスが送られて来たんですから !!
メロディ考えてリリック書いてレコーディングして(しかも本レコ)、という行程を考えると、凄まじいスピードだと思います。
それが普通だよ、という人も結構いるのかもしれませんが。世界のレベルを見せつけられた気がして、既に圧倒されていました。普段会っている日本人アーティストではこうは行かないでしょう。もちろん、プロアマの違いもあるかと思いますが……
送られてきた曲を聴いた瞬間の喜びは今でも忘れません。
めちゃくちゃクオリティ高い!歌うまい!それに何これ、おれが作ったオケに乗ってるじゃん(当たり前)!え、リミックス???オケ乗せかえのリミックス???
でもディグリーはイチバンとかジャパンとか言ってるし、やっぱレコーディングしたやつやこれは!!
て感じで興奮度はMAX!\(^^)/
ちなみにボーカルのミックスはジャマイカのエンジニアに任せる感じになってました。制作費はかさんでしまうけど、それがベストだというのだから仕方がない。
という訳で、自分がやることはオケのミックスをし直すこと。ジャマイカ人の感覚でいうと、自分のミックスはモヤモヤ感とダブつきがあってスッキリしないんだそう。
スネアのサスティンは長いし、キックはブーミー、中低音は鳴りっぱなし、これでは踊りづらい。
今のダンスホールでは、ショートなキックにショートなスネア(か、それに変わる音)、そして全体的に歯切れよくシャッキリとしたミックスが主流です。
また、自分のオケはハイハットを始めとした刻み系の高い音も多かった。今はハイハットをスキマにちょっとだけ入れて、周波数の高い部分は他の音で補うのが流行です。
僕はディグリーの指導のもと、パーカッションを差し替え、音を削り、0.1デシベル単位で各トラックの調整をすることにしました。
あの曲を参考にしよう。
あの曲のあの音は〜。
あの音が大きすぎる。
声に被りすぎてる。
スペースが無さすぎる。
ここのトラックはどうなってる?
乗せる声によって聞こえが違う、ここは〜しよう。
スタジオの外でも何回も聴きなさい。
また、音の抜き差し等、トラックのアレンジも同時に行っていきました。自分では「え!こうしちゃうの?ここ抜いちゃうの?」という展開もありましたが、聴き続けているとそれがベストに聞こえて来るから不思議です。
各調整はめちゃくちゃ細かく、トータルで2ヶ月半もかかってしまいました💦
早朝起きたら電話、夜も遅くまで電話。一番厄介だったのは、ジャマイカとの時差が14時間あることかもしれません。とにかく時間が合わないので、お互いに調整をしながらの作業でした💦
向こうはこちらの寝る時間や仕事の時間を気にかけてくれるジェントルマンでしたが、自分は少し疲れてしまっていました。慣れない英語で緊張する相手と会話していると、かなりのパワーを消耗します。さらにこんなに長期間の作業になるとは予想もしてなかった。
また、制作以外でもこの2ヶ月の間はなかなかハードでした。
車を買い換え、パソコンが壊れ、新しいパソコンはインストール地獄、お金はない、連日続く猛暑、etc...
参加しているクラブイベントに迷惑をかけてしまったことも何度かあります。
人生、大変なことが重なるときは本当に重なるもんです。
ずっとお腹痛いし、ずっと眠いし。お酒が美味しく感じなくなったのもこれと無関係ではないでしょう。味覚も変わり、変なところでは桃とブドウの「皮」がすごく美味しく感じました(笑)
しかしこういう時期も人生にはきっと必要なのでしょう。色々な出来事を受け入れる度量は増えたと思います。転換期なのかも。
何かの宗教に入ってるわけではないですが、制作期間中に地元の氏神さまのお祭りがあったり、またお盆にはご先祖さまをお迎えに行ったりしたことも、少しリフレッシュになりました。
さてさて、そういうわけで制作以外にも様々な山を越え、谷を渡りながら、いよいよオケが完成したのでした。
〈その3へ続く〉
One More Time Riddim その3 ディエッサーはネイティブスピーカーがかけるべき? - トラックメイカー視点の音楽鑑賞